遺失物届け

こないだ

おい弟ー、こないだ帰ってきたとき、お前にARA基本ルール貸したよな。
「うん」
はよかえせ。
「あれ? 返さなかった?」
ない。俺のアパートでも何度も探したけど、上級ルールだけで基本ルールがどこにもない。
「そっか……分かった。探してみる」
夏休み終わるまでに返せよ。

上よりは最近のこないだ

なぁ。
「なに?」
はよかえせ。見つからなかったら弁償しろ。
「えー」
えー、ちゃうわ。お前、何やねん。
「んー、わかった。その代わり、弁償した後で古いのが出てきたら俺に頂戴」
それでええよ。急いではいないけど、はよかえせ。いますぐかえせ。
「うぃー」

昨日

「なぁ」
ん?
「やっぱ思ったんだけど、絶対兄ちゃんアパートに持って帰ってるって」
いや、探したって。本一冊が埋もれるほど、モノないし、俺の部屋。
「いや、絶対そっちにあるって。上級ルールだけ持ってかえって基本ルールを忘れるなんてありえへん」
そっかなぁ……そっか、ごめん。もう一回探してみる。
「絶対あるって、ふつうに考えて」
そうか、そうだよなぁ。

今朝

「兄ちゃん! 携帯貸してくれ!」
は?
「自分の携帯どこ置いたか忘れた、ちょっと電話かけてくれ」
あー、了解。ちょっと待って。
(♪♪♪♪♪)
「えーと、枕の下から聞こえt――」
どした?
「あの、まじ、ゴメン、なんか、ARA出てきた」
うわー、やっぱこっちにあったじゃねーか、おめー!
「いや、きっと、これは日ごろの兄さんの善行に感激した神様が」
そういうおとぎ噺はいいから。
「じゃあ俺の枕が不潔で生えてきた」
そういう微妙にリアルな話もいいから。
「リアルとか言うな」
じゃあ片付けろ。