憧れの君

人間、誰にでも「憧れの人」がいると思います。
私にとって「従兄のMお兄ちゃん」は、まさしく子どもの頃からのヒーローでした。
優しくて、格好良くて、何でも知っていて。


私が保育園に入る前にはM兄さんはもう高校を卒業していたので、14,5歳は離れている筈です。
それでも私がM兄さんにべったりだったのは、長男だった私のお兄ちゃん役をしてくれたことも、理由の一つだったのかもしれません。


話は前後しますが、M兄さんは当時、私の家に寝泊まりして高校に通っていました。
私はそのときまだ洟を垂らして暇を持て余す糞餓鬼でしたから、一日中M兄さんに付き纏っていました。
おかげでろくに勉強も出来なかったと思います。ごめんなさい。


ママチャリの籠に私を乗せて買い物に出掛けたり、近所の田んぼでミステリーサークルを見つけたり、私の腕にトマトケチャップを塗りたくって「大変だ○○(弟の名前)! ○○(私の名前)が怪我しちゃった!」と脅かしたり、当時の私が「鰹節」を「かつおむし」と呼んでいたのをからかって「このかつお虫まだ生きてるね、ほら、動いてる」と言って幼くいたいけな少年の心に決して消えない傷を作ったり、そんな思い出はそれこそ星の数ほどあります。
これだけ見たら変な人だけど、それでも今も昔も私がM兄さんのことを深く慕っていることは分かってほしいと思います。


さて。
今まで書いてきた話とはまるっと関係なく、ここから本題が始まります。


憧れている人に少しでも近付きたい、というのは恐らく誰にでも理解できる感情でしょう。
私もその例に漏れず、M兄さんの真似をしていることがたくさんあります。
両親曰く、私の箸の持ち方がおかしいのはM兄さんのせいだそうです。
なのにM兄さんったらいつのまにか自分だけ正しい箸遣いをマスターしていやがって(ry


また脱線してしまいました。
えーと、そんなわけで私はM兄さんのやることなすことを真似して生きてきました。
理由なんてありません。
敢えて言うなら、私の前にM兄さんが歩いているからです。


そんなM兄さんが何年か前に実家に遊びに来たのですが、私の両親が風呂を勧めたときに「それじゃあ頂いてきます」って言ったのですよ。
か、かっこいいー!
いや、日本語としてはおかしいことこの上ないのですが、それでもサラリとそういうセリフが出てくることが格好良いと思ったのです。
だって、私だったら「いってきます」ぐらいしか言えないよ。「頂いて〜」の方が畏まって聞こえる!
よーしこれはいつか真似してやろう、と、この出来事を深く心の中にしまいこんでおきました。


時は移って昨日の晩(日付上は一昨日)。
伯母の家に遊びに来て、お風呂を薦められました。
これはチャンスだと思い、元気良く一言「いただきます」。


何を食う気だ。