天空の花嫁 III

いやあ、年上幼馴染みって本当にいいものですね(水野晴夫)。


水野ちんといえば最近、わが県ではこの人は鬼畜米英の如く嫌われてます。
そら、鳴り物入りでオープンさせた水野ちんプロデュース映画館を、半年で潰れさせちゃったら怒るよなぁ……。客入りが減って、同じビルのテナントは怒り心頭らしいです。中には撤退しちゃったテナントもちらほら。
今、ビル運営会社と水野ちんが、滞納しているテナント料を払う・払わないで裁判ちうの筈。いや、それは払えよ。

サンタローズ

 ――サンタローズの村は、私たちの故郷なのだ。
 リュカは船中でパパスにそう聞かされた。
 村に着いた時、人々はみんなパパス一家を篤く迎えてくれたが、リュカには今一つピンとこない。村のことはほとんど覚えていないのだ。
 それでも、ここが自分の故郷なのだ、と考えると嬉しくなる。ここに住む人達がみんな自分の仲間だと思うだけで胸がいっぱいになる気がした。
 そのとき、村の奥から一際大きな声が上がった。
「パ、パパス様!」
 見ると、丸々とした男がこちらに向かって一直線に駆けてくる。
「パパスさ……いえ、旦那様。よくぞご無事で」
 近付いて来るその顔を見て、リュカははっとした。
「……サンチョ、さん?」
 サンチョがひどく驚いた目でリュカを見た。
「もしかして、リュカ坊ちゃんですか? ああ、坊ちゃんが私の顔を覚えておいでだとは……」
「リュカはお前におぶさって育ったのだ。忘れるものか」
 息を切らせて目の前にやってきたサンチョの顔を凝視する。
「坊ちゃん、こんなに大きくなられて……私は、もう、嬉しくて……」
 全身汗だらけのサンチョの顔をじっと見詰める。間違えようもない。
「夢に……」
「うん? どうした、リュカ」
「今朝の夢に、サンチョさんが出てた」
 その瞬間、パパスが、ぎゅっと体を堅くしたような気がした。
 ――パパス様、パパス様! お産まれになりました!
 あのときのサンチョも確か、汗だくになってパパスを呼びに来た。夢と同じ笑顔のサンチョが言う。
「おお、なんと。どんな夢だったのですか?」
「それが、お父さんがお城で――」
「おやまあ、パパスじゃないかい!」
 不意に声がした。宿屋の方から、知らないおばさんが手を振りながら歩いてきた。
「久し振りだね。おかえり、パパス、リュカ」
「ダンカンのおかみさんじゃないか! 本当に久し振りだな。どうしてサンタローズに?」
「うちの人が風邪をこじらせちまって。薬師の親方にお薬をもらおうと思ってさ」
「大丈夫なのか?」
「ははは、何を言ってんだい。殺したって死にやしないよ、あの人は」
 そのとき、ダンカンのおかみさんの笑い声に合わせるようにして、くしゅん、とかわいい音がした。
「おや、いけない。リュカまで風邪をひいちまうよ。まだ寒い季節なんだから」
「坊ちゃん、すぐに部屋へ……奥様も一緒にどうですか?」
「そうだな、せっかくサンタローズまで出て来たんだ。是非寄っていってくれ」
「……そうかい? じゃあ、ビアンカを連れていくから、先に行っといておくれ。リュカに暖かいベッドを作ってやらなきゃいけないんだろう?」
「ああ、ではあとで」
 リュカを背中におぶさると、パパスは早足で数年振りの我が家へと向かった。


 気がついたら、見覚えのない部屋にいた。あのままパパスの背で寝てしまっていたのだろう。
 窓の外はもう真っ暗だった。上体だけを起こすと、額に乗っていた濡れタオルがべたりと胸に落ちた。寒風が窓を叩く。
 ぎいい。
 静かにドアが開いた。亜麻色のお下げ髪の女の子が、そっと顔だけを覗かせる。
 目が合った。
「あ、起こしちゃった?」
「……ううん」
「元気そうね、よかった」
 嬉しそうに言うと、水の満ちた桶を持って部屋に入ってきた。
「タオル、絞り直そうか?」
「いや、あの……ねえ、君は誰?」
 む、と彼女が顔をしかめた。
「サンチョおじさまのことは覚えていたのに、わたしのことは忘れちゃったの?」
「……うん」
 あーあ。溜め息を吐きながら、彼女は極めて事務的にリュカの額に手を添えた。ひんやり冷えた右手の感触が心地よい。
「熱はないか。お水、新しいの汲んでこなくてもよかったなあ」
 タオルを拾って桶に投げ込み、そのままリュカの瞳を覗く。
「本当に、私が誰か分からない?」
「ごめん」
「別に、怒っているわけじゃないんだけど」
 嘘だ、とリュカは思った。さっきから彼女の眉根は寄せられたままだ。
 それでも、縮こまったリュカの様子を見て、彼女は少し笑って早口で付け足した。
「サンチョおじさまのことを覚えてたっていうから、ちょっと期待してみただけ。本気じゃないの。私もまだ小さかったし、覚えている方がおかしいよ」
 数年振りに再会した幼馴染みはそう言うと、立ち上がって膝を折り曲げ、スカートの裾を持ち上げる気取った仕草で会釈をした。
「お久し振り、リュカ。私はビアンカ。これでも私、あなたより二つも年上なのよ」

最初の冒険

ダンカンのおかみさん

「薬師の親方が、薬草を取りに行ったきり帰ってこないんだよ」

パパス

小舟に乗ったパパスがこっそり村の奥の洞窟に入っていく。
付いていこうとしたら、舟の持ち主の老人に「帰れ」と怒られる。
パパスはこの先に来てほしくないらしい。

洞窟

村に流れている川の水源となっているこの洞窟。
老人の住む小屋の向こう岸から洞窟に入ることにする。
洞窟に入るとすぐに、パパスの乗っていた舟が川の中洲に止まっているのが見える。
今のリュカにはそこまでいく手段がないので無視して洞窟の奥へ。
どんどん進んでいくと、薬師の親方が巨石に挟まれて身動き出来なくなっているのを発見。
巨石を押して親方を助けてミッション終了、洞窟を出る。
いつの間にか目的がパパスの捜索から親方救出にすりかわっているけど、電源・非電源に関わらずRPGではよくあることなので気にしない。


そして、薬を夫に届けるダンカン親子に誘われて、リュカたちはアルカパの村へ――