退化

昨晩(っていうか日付上は今日)、部屋をごそごそ整理していたら古いノートを見つけた。高校生ぐらいのころの落書き帳だ。
中身をパラパラ見てみたら、現在の俺とのあまりのレベル差に打ちのめされ泣き伏しそっとノートを閉じた。最近よく「年下の絵に嫉妬」なんて冗談混じりに言う僕だけど、まさか年下の自分自身にこうまで敗北感を与えられるだなんて思いもしなかった。
あのノートは真剣だった。当時既に漠然と「将来は情報技術者で食っていきたい」と考えていた筈の俺は、余暇の絵にも真剣であった。
今みたいに感覚だけで描かれたのんべんだらりとしただらしない線なんか1本もない。線1本が他の線にどんな影響を及ぼすかについても計算された美しい線。
今の俺にはそんな技術は全て失われてしまった。この4年間、描いてきた絵が恐らく50枚にも満たないという、このブランクは大きい。
何より今の俺は「絵を描く」という余暇に、以前ほどの魅力を感じなくなりつつある。


……でも、それなのにこんなにも悔しくて情けなく感じるのは何故? 言い訳見つけて敗北からも逃げようとしていないか、自分。
それでも過去の自分としっかり向き合うのが怖い。絵だけじゃない。勉強に遊びに一生懸命だったあの頃の僕。
何より恐ろしいものは、自分の前に越えられない障害なんか一つもないって信じ切っていた、あの幼く無邪気で残酷な目。