激怒した

86 :水先案名無い人:04/03/13 23:25 ID:El1+0hnD
セリヌンティウス。私を殴れ」
「メロス、同じくらい音高く私の頬を殴れ」
男たちの乾いた鉄拳の音が、澄みきった青空にこだまする。
処刑所に集う市民たちが、今日もやじうまのような好奇の目で、人垣をくぐり抜けていく
勇者メロスを襲うのは、舟も渡れぬ濁流と三人の山賊
行きは妹の結婚式に間に合うように、帰りは日没までに間に合うように
韋駄天のごとく駆けるのがここでのたしなみ
もちろん、メロスは来ぬのではないかと、ちらとでも疑うはしたないセリヌティウスなど存在していようはずもない
403 :水先案名無い人:2005/08/29(月) 10:05:12 ID:x692Vrkr0
メロス「待て、王よ! メロスはここだ! メロスは間に合ったのだぞ!!」
セリヌンティウス「……バ、バカ! なんで戻ってきたのよ、バッカじゃないの!? そんなに死にたいの?」
メ「でも俺、俺の命なんかよりも大事なものがあるんだ。俺の誇りと、それと」
セ「それと?」
メ「……お前だよ。さあ、王よ、セリヌンティウスのいましめを解いてくれ。その台で死ぬのはこの俺だ」
セ「ダメーッ!! そうよ、ダメなの、だってほら、もう日は落ちているわ! だから私を処刑して!! それがルールでしょっ!!」
メ「いや、まだ落ちてはいない。地平線のかなたに未だ輝く太陽を、この場の皆が見ている。──さあ、兵よ、降ろしてくれ。
  セリヌンティウス、俺を殴れ。俺は一度、お前を見捨てた。疲れ果てて、挫けそうになったのだ。
  お前が殴ってくれなければ、俺にはお前を抱く資格が無い」
セ「な、な──(ペシッ)なんでそのまま諦めなかったの!? なんで戻って来たのよ!(ドンッ)」
メ「だから──」
セ「うるさい! あんたみたいなバカ、さっさと死んじゃえ!!
  う……うぅ……ホントは、ホントは! 待ってた、ずっと待ってたわ。信じてた、きっと助けに来てくれるって!!
  でもね……でも……一度だけ、一度だけだよ? もしかしたら、戻ってこないんじゃないか、って、思ったの。
  私、死にたくなくて、でもあんたにも死んで欲しくなくて、戻ってきて欲しくなくて、それなのに疑って、自己嫌悪で、
  もう……ぐじゃぐじゃだったの……。ねえ、メロス、私のこともぶって?」
メ「……(なでなで)」
セ「ぶ、ぶってって言ったのに……言ったのに。(ぎゅっ)う、うえぇ……やっぱりやだぁ……。
  いやよう……メロス、お願い! 私なんかどうなったっていい、もう一度逃げて!!」
メ「ありがとう。その言葉だけで、俺は喜んで死ねるよ。──王よ」
王「……私の負けだ。お前たちの心が、私に勝ったのだ。私もその仲間に入れてもらいたい。
  わが娘よ、勇者にマントを! さあ、それを覆うがいい。この娘は、お前の裸を皆に見られるのが、たまらなく悔しいのだ」
セ「……ふぇ? な、なななななななんてカッコしてんよのあんたはっ!!」

ツンデレは、赤面した。