DREAMer

怖い、とても怖い夢を見たの。


夢の中の私は現実の私とは何も変ることがなくて、
ただ財布の中に一万円札が一枚入っていたことだけが違っていた。
あるはずのないもの。


私じゃない私はその事実を淡々と受け止めていて、
そして淡々と普段通りの日常を演じていたわ。


ただいつもよりちょっとだけいいものを食べて、
ただいつもよりちょっとだけたくさん遊んで、
いつもなら買うことのできない食玩さえ買ってみせた。


遊びつかれた私じゃない私は、いつもよりちょっとだけ早い時間に眠ることにして消えた。


さようなら、おかねもちの私。
おかえり、まずしい私。


目が覚めたら最初に机の上を見た。
小さい頃におばあちゃんに買ってもらった捨てられない財布がそこにはあって、
中には、最後の記憶から増えも減りもしていない何枚かの千円札が入っていた。
何故だか涙が止まらなかった。
ああ、夢を見たのって、何ヶ月ぶりだったっけ。