そろそろ3/11の俺の行動について一言言っておくか

  • 14:25頃にタバコ休憩。18階のオフィスから2階の喫煙スペースに移動。このときは何事も起こっていない。
  • 14:40頃にオフィス戻る。当然、エレベータも元気に動いてる。
  • 14:43、地震発生。最初は「揺れてるなー」って感じ。キャスターつきの椅子に座って呑気に周りを見て笑ってた。
  • 14:44、1分経っても揺れが止まらなくなってきたあたりからだんだん青ざめてきた。自分の感覚で1分と思っただけで、実際は数十秒のことだったかもしれないし、逆に数分後のことだったかもしれない。同僚の一人の顔が蒼白になる。嘔吐。女性の顔が怯えている。多分、自分の顔も相当にひきつっていたと思う。
    • PC(スリムタワー型)が倒れ出し、みんなで慌てて抑える。一人がマシンを横に寝かせて、それを見たみんなもマシンを寝かせる。冷静に考えれば最初から寝かせるべきだったんだけど、誰もそんな判断力を持っていなかった。「すぐに地震なんか終わるだろう」という甘い見通しもあったかもしれない。マシンを寝かせたあと、ディスプレイも寝かせる。相変わらず酷い揺れで(不謹慎なたとえだけど、乗馬運動マシン並に左右に大きくビル全体が揺れていた)、ひどく苦労しながら寝かせた覚えがある。各自、自分のマシンは寝かせることができたが、試験用に置いてたWin機やLinux機までは手が回らず放置。結果的に倒れなかったからよかったものの、ファイルサーバがもし死んだりしてたらとんでもないことになってたと思う……。
    • 扇風機倒れる。羽ガードが吹っ飛んだ上に、回転中の羽が机に当たって「ガガガガガガガガガガガガガガガガ」。それを見て僕は何を思ったのか一生懸命に羽の中心部を手で押さえて回転を止めようと右往左往していた。あの瞬間、完全に、「扇風機にはスイッチがある」という常識が僕の脳から欠落していた。ちょっとうろたえ過ぎなんじゃないかな……。近くの席の先輩が駆けつけてスイッチ止めてもらった。かっこよすぎて惚れた。
    • あと、コーヒーメーカーを机の上から床に移動したりした。家庭用の小さいやつじゃなくて、喫茶店とかに置いてあるデカイヤツ。あれが倒れていたらいろんな意味で大惨事だったと思う。
  • 数分後、地震止まる。誰かが「早くドア開けて固定して!」と叫ぶ。ドアストッパー挟んで一安心。
    • 同僚の一人が「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるわ」宣言。顔面蒼白。すごい揺れだったものね……。個人の名誉のために言うと、最初にマシンを寝かせたのはこの人。地震に対する対応は冷静かつ的確だったけど、いかんせん揺れが強すぎた。
    • みんな一斉にインターネットで地震情報を探す。も、どうやら社内の人間全員が一度にアクセスしたらしく、社内プロクシサーバが落ちてる。まぁ、どうせプロクシ生きてても外の回線も混雑して死んでただろうから結局無駄だったろうけど……。仕方無しにケータイで検索するも、当然こちらも、どのキャリアの回線も死んでる。途方にくれる。
  • さらに数分後、再び揺れが。
    • 既にサーバやテスト用マシンなどは寝かせていたため、みんな完全に自分の身だけを守ることに専念。机の下にこもる人、床に座って周りを見渡す人、それぞれいた。自分は机の下には潜らなかった(キャスターつきのキャビネットが揺れていて危険を感じたのと、周りの視界が遮られることに艇庫を覚えたため)。
    • 震源が近いのか、オフィスが縦に揺れる。笑い声混じりではない、悲愴な声が聞こえ始める。自分も生きた心地がしなかった。このまま死んだら自宅の荷物とかどうなるのかな、掃除は誰がするんだろう、みたいなことを考えていた。生きた心地がしないというか、自分の生を第三者的に俯瞰していたような感じ。実感を伴わないというか、テレビの向こう側の登場人物について考えるような。
  • 余震が止まる。余震というか、完全に主要動クラスの揺れに各自びびりまくっている。(同じ階に就活生来てるんだよなぁ。かわいそう。もしこれでこの会社受かったとして、ちゃんとみんな入社してくれるのかなぁ)みたいなことを考える。あと、(コーヒー余りまくっててもったいないなぁ)みたいなことも考える。余震後しばらくはそういうどうでもいいことばかり考えていた。
    • 暫く待っていたら、今度は回線が復旧した。「東北だって」「震度7……」「二度目は茨城か」「震源、近づいてない?」
  • 部長がオフィスに来る。「避難することに決まった。荷物まとめて準備して」。いそいそとPCの電源落とす。ファイルサーバもバックアップサーバも全部落とす。それじゃあ避難しよう、と非常階段の扉を開けようとしたら、逆に向こうから開いて人が出てくる。「どうしたんですか?」「よく分からないんだけど、総務が『指示あるまでオフィスで待機しろ』って」 えええ! この期に及んで指示系統が乱れている。
    • オフィス戻るのに恐怖感を覚えていたため、非常階段の窓ガラスから階下を見下ろして外の様子を伺う。隣に後輩がやってくる。「下、人が集まってるねぇ」「集まってますね」「中央公園、すごい人だね」「すごい人ですね」「あれ、そういえばみんなは?」「さぁ」 僕達の他に数人たむろしていた筈の非常階段踊り場に、気づけば僕と後輩以外の人間がいない。「どうしようか」「どうしましょうか」「さっき、プロジェクトのメンバがこっそり下に降りてったのは見たけど」「じゃあ僕達も降りちゃいましょうか」「そうしようか」「はい」 というわけで、ここぞとばかりに逃げ出した。本当はこういうとき、こういう個人の勝手な判断がのちのち大きな混乱を招く*1というのは、今、冷静になって考えればすぐに分かる。でもあのときはとにかく一刻でも早くあのビルから出たかった。
  • 外に出る。人がすごい。新宿中央公園が黒山だかりで入れそうもなく、あの中に入ってしまうと逆に誰とも合流できなくなるのでは、と思い、横断歩道を挟んで反対側の歩道から公園を見守ることに。でも、5分待っても10分待っても誰も来ない。
    • 家族に連絡する。繋がらない。メールする。繋がらない。仕方が無いので再送設定をして放置。母に「超揺れた! そっちは大丈夫?(文面ママ)」というクソみたいに何も伝わらないメールを送った。15:37に送信が完了する。なかなか返事がこない。16:08に返事が返ってくる。「こちは大丈夫。みんなも平気。」 まずは一安心そのまま、簡単にメールの応酬。「荷物全部持って公園に避難中です。寒い……。」「怪我はしてない?薬屋かあったらカイロ買ってください。」「分かった」
    • 後輩が青い顔をして何度か電話をかけている。「繋がらないの?」「はい。彼女にはつながったんですけど、実家が……」「メールは?」「うち、誰もケータイ持ってないんです」 思わずうめく。「実家どこだっけ」「岩手です」 再びうめく。
  • 待てども待てども誰も来ない。地上に降りたのが15:30ぐらい。若干、記述とは時間が前後するけど、「16時になっても誰も来なかったら、余震も落ち着いてきたみたいだし一旦オフィス戻ろうか?」と提案する。彼も了承したため、16時に一旦オフィスに戻……りかけて、途中で方向転換。「どうしました」「ごめん。落ち着かないからタバコ1本吸わせて」「あ、はい」 喫煙所にいたらプロジェクトメンバーみんな居た。おい……。
    • そのまま、ビル2階でワンセグ見ながらぐだぐだ話す。(今、今度こそ大きい地震が来たらみんな埋もれて死ぬよなぁ)みたいなことを思ったけど口には出さなかった。女の子たちは顔を青ざめていたので、中には同じようなことを考えていた子がいたかもしれない。
  • 「帰宅命令出た。帰ってください」
  • ようやく安堵感。でもその直前に「私鉄JR全線運休らしい」という話も聞いていて、みんなで途方に暮れる。「どうしようか」「どうする?」「じゃあ呑みに行くか」「えー」
    • 結局呑みに行く。徒歩やバスで帰れる人、徒歩圏内じゃないけど頑張って歩く! という人以外と別れて新宿駅に向かう。当然どの店舗も閉まっていたんだけど何故かJR改札そばの金の蔵が絶賛営業中だったため、ずかずか中に入り込む。席はスカスカ。いい時間帯に来た。
    • ジョッキを人数分注文し、駅に偵察に行った先輩が帰ってくるのを待つ。来た。「どうでした?」「あかん。小田急、シャッター閉まってる」 ええええええええええええ。
    • 「どうします?」「どうしようたって、シャッター閉められたらどうしようも……」「……」「……」
    • 「かんぱーい」 とりあえず酒に逃げた。
    • 「あれ、めいぼうじんくんなんで鞄持ってんの?」「大丈夫です。だってまだ5時ですから!」「いやそれよく分かんない」
    • 和やかなムードで飲み会が進む。この日、一番心休まった時間だと思う。
  • タバコ切れたので買いに行こう……としたら、すごい行列! 電車も停まっているのに、何故……と思ったら、タクシー待ちだった。恐ろしい行列だった。サンダーマウンテンとスペースマウンテンとスプラッシュマウンテンの待ち行列を一列に並べたらこうなるんじゃないか、っていう行列が何本も出来ていた。さらに恐ろしいことに、その行列、まったく前に進む気配がない……。この時点で、確か5時半くらい。地震発生から2時間でこうなったことに、改めて新宿の人の多さにびびる。
    • 外出たついでに、Desireで実家に電話かけようとしたら、呼び出し音も鳴らずに「現在、緊急通報以外の通話はできません」というキャプションが出て即電話終了された。そんな機能があったのか……。
    • ちなみにタバコですが、キオスク閉まってたしコンビニは長蛇の列だしで、諦めました。金の蔵に自販機あったけど、Lucia置いてる自販機とか存在しないし……。
  • 18時半頃、店員が申し訳なさそうに来る。「すみません、お客様、ビルの保安から指導が入りまして、19時ラストオーダー20時閉店とさせていただきます」 っていうかよく今の今まで平気な顔して営業してたな。ここ地下だぞ。ありがとう、お疲れさまでした。おかげで助かりました。
    • いつのまにか金の蔵が避難民で溢れてる。旅行かばん持った人とかもいる。大変だ……。
  • 追い出された。
    • 改めて実家に電話かける。つながる。「もしもしおれだk「もしもし兄ちゃん!? 無事なの」「うん、まぁ、無事だから電話かけてるんやけど」「だって連絡途絶えちゃったし」「いや、まぁ、今まで地下で呑んでたし」 失笑された。
    • 「母さん、そっちは大丈夫?」「うん、全然揺れなかったし。そっちは? 寒くない?」「呑んでたからちょっと暑いぐらい」「あ、ちょっと、弟に代わるね」「うん」「もしもし兄さん? 電話かけてこないで」 えっ……。「災害掲示板見て」 ああ、うん。そういうことね。「こっちからも安否登録したりするから、兄さんもこまめに見て。電話やメールは繋がらなかったり遅延あるから、なるべく災害掲示板使って。東北と連絡とりたい人に帯域開けてあげなきゃ」「うん」「あ、待って、妹に代わります」「分かった」「もしもし兄ちゃん? 電話やめて」 またかよ。その後、災害掲示板について再レクチャーを受ける。知ってる内容ばかりだったけど、実際使っていなかったので、何も言えずに黙って講義を受けた。弟も妹も優しい子でよかった。
  • 行く場所がないので、一旦オフィスに戻ることに。また18階……と思ったものの、余震もほぼ収まっていたので仕方なく向かう。途中、コンビニでビールとスナック菓子をしこたま飼い込む。飲みまくり。
    • その後はオフィスで2時間ほど遊んだ。仕事はまったくしていない。何故かスクラブ洗顔がブームになって全員で洗顔したりしていた。あのテンションはなんだったんだろう……。
  • その後、同じ方向の先輩のご家族に車で迎えにきてもらうことになって、10時半出発1時着で無事社員寮についたところで当日のおはなしはおしまいです。

とりあえず、推敲も何もしていないただ思い出したことを時系列に並べただけのエントリだけど、記憶が美化または劣化する前にとりあえず当時の思いを残しておこうと思って書いた。あまり被害のなかった都市部の一市民の日常はこんな感じでした。
割とお気楽な一日を送っていたつもりだったんだけど、今朝、輪番停電&鉄道各線の規制・運休で自宅待機が命じられてからものすごい気分が滅入ってしまって、案外こんな一日でも負担に感じたのだなぁ、と思いました。週末お気楽に過ごせたのも「こんな一大イベントがあったんだから月曜のオフィスちょう面白いハズ!」「倒したPCを起こす作業から一日が始まるんだけど、みんな『新婚でハネムーン行ってるAさんのマシンだけこのまま倒しておこうぜ』って言ってたけど本当にやるのかな」と、月曜からの生活が普段どおりの日常に戻ることを前提にして気分を調整していたので、それがいざ「今日は休みです。ふつうと違います」と言われたときに、改めてあの地震が自分の日常を壊すものだったのだと気付いて気持ちが悪くなっている、というのが今の僕の様子です。
明日こそは! 会社に! 行きたい! ので東京電力さん小田急電鉄さんどうかよろしくお願い致します。
自分自身も自分の半径3クリック圏内の友人知人にも何も被害がなく、みな五体満足。なので、明日からは、また明るく元気にバリバリ働いてブンブン経済ぶん回して自分の日常を取り戻して周りの人の日常も取り返して自分の目の届く範囲の人の幸せを守るのが自分にできる精一杯のお仕事かなーと思うので、まずは明日! 寝坊せずに出社できるようそろそろ寝ます。今日うっかり6時間ぐらい昼寝してしまって全く眠気ないのですが頑張って寝ます。

*1:指示系統の乱れや、メンバーの安否確認など。