「ちっちゃい子だから好き」ではなく「好きな子がちっちゃかった」だから僕はロリでもペドでもないということを証明するエントリ

15歳未満が読んだら目が腐る。


 ぽかぽかと陽気な日光が窓から入り込む麗らかな午後。こんな日に程よくまどろみながらの読書は、最高の贅沢だ。
 これで小学生の家庭教師なんて面倒な仕事がなければ、もっと最高なのだが。背伸びしたい盛りの12歳は、なかなかに厄介な相手だった。
「せーんせ、何してんの?」
「読書」
 ほら、また始まった。このぐらいの歳の子は、大人のやることになんでも興味を持つ。
 案の定今日も、カナは俺の手にする分厚い本に興味を示した。椅子をくるりと回転させ学習机に背を向けて、不思議そうにこっちを見る。向日葵柄のワンピースから伸びる長い足をばたつかせ、やや退屈げだ。
「それ、今週号?」
 俺の持つジャンプの表紙を覗き込もうと、ポニーテールが左右に揺れる。彼女に見やすいように本を持ち上げて、カナに訊いた。
「何に見える?」
「ジャンプの今週号」
「そうだね」
「読んだら貸して」
「カナちゃんが宿題終わらせたらね。じゃないと今日の勉強できないから」
 本来、学校の宿題にまで面倒を見る謂われはない。が、俺の持ってきた課題ばかりが進んでも、学校の提出物が疎かになっては、結局査定に響くのだ。
「どれぐらい進んだ?」
「まだまだだよー。ね、せんせ、この問題分からないんだけど」
 机のドリルを指差すカナ。それを後ろから覗き込み、と同時に顔をしかめて呻いた。
「漢字の書き取りに分かるも分からないもないだろ。さ、手を動かして」
「せんせがサボってるのに、カナだけ勉強つまんなーい」
「宿題と今日の勉強が早く終わったら、ちょっとだけ遊んであげるよ」
「むー、つまーんなーい! つーまーらーなーいー!」
 両手を振って大声で暴れだすカナを見て、流石に焦る。階下のご母堂に聞きとがめられたらコトだ。
「ばっ、やめろって! 分かった、ちょっとだけ休憩入れよう」
「やたっ、せんせ大好き! あたし、お茶淹れてくるね」
 がたん、と勢いよく椅子を蹴って、カナが立ち上がった。
「ちょっとだけだからな」
「はーい」
 返事と同時に、階段をどたどた駆け降りる音。
「はあ」
 ため息をつく。これで今日も残業決定か。


「ただいまー、クッキー持ってきましたー」
 言葉の通り、カナの持ってきた盆には、皿に盛られた焼き菓子が乗っていた。
 ポットを彼女から受け取って、急須に注ぐ。休憩時間に緑茶が出てくるのはいつもどおりだが、お茶受けの品目がおかしい。(なんで緑茶にクッキーなんだ)、と思ったが口には出さない。
 代わりに、勉強する気が全く無くなってしまったカナに釘を刺す。
「……本格的に休憩するつもりに見えるんだけど」
「もちろん! 何でも全力で一生懸命やれって言ったのは、せんせでしょ」
 胸を張って堂々とそんなことを言えるカナは、心底から大人物だと思う。
「本当に『何にでも』一生懸命やってくれるなら、先生も文句は言わないよ」
「でも、だって、漢字の書き取りなんて疲れるだけでつまらないもん。あんな簡単な字、もう覚えたし。無意味だよ」
「あー、それは、まあなあ」
 自分の小学時代を思い出し、思わず同意しかけた。そこを今一歩で踏み止どまり、教師として最低限の威厳を見せる。
「といっても、学校の宿題ってそういうものだしな。そういうことは学校の先生に言ってくれよ」
「言ったよ。そしたら怒られた。だからせんせに言うの」
「……なかなかに大胆だね」言いながら、ひょいとクッキーを一つ摘んだ。
 と、その手をカナがじっと見つめる。あまりに熱い視線だったので、思わずクッキーとカナを見比べた。
「……何?」
「え、や、何でもない! 全然!」
 慌てて胸の前で手を振る。この大袈裟な反応で、今日の茶受けがクッキーだった理由が分かってしまった。
 ゆっくり、さりげない動作でクッキーを口に入れる。カナがぐいと前のめりになる。咀嚼のリズムといっしょに、彼女の瞳も上下に揺れた。
 口を動かしたまま、湯飲みに手を伸ばす。口の中にクッキーはもうないが、茶を流し込む。そうやってタイミングを計ってから、カナに向き合い、先ほどと同じ問いを投げた。
「何?」
「……どうかな?」
 お茶の味を聞かれているのでないことは、どんな馬鹿でも分かる。
「旨いよ」
「……よかったー」
 一遍にカナの肩から力が抜ける。
「ね、これね、あたしが作ったんだよ」
「へえ、凄いじゃないか」
 大袈裟に驚いて見せる。
「でしょ? 頑張ったご褒美に――」
「勉強しようか」
「えー」
 うなだれるカナに、最後通牒を出す。
「先生は買収工作には応じません」
「けちー」
「さ、机に向かって」
「……うん、わかった。でもね」
「どうした?」
「その前に、ね」
 カナが頬を赤らめて目を伏せた。
「その前に、ご褒美、ちょうだい」
「ご褒美なあ。何が欲しい?」
「バカ。知ってるくせに」
「バカはひどいなあ。……目を瞑って」
 返事を待たずに口付け。こちらが唇を割るより早くカナの舌が口腔内に侵入してくる。唾液を絡ませてやると、喜んで吸い立てた。
 ゆっくりと唇を離し、互いの顔を見る。カナはより一層に顔を紅潮させ、自慢げに問うた。
「どうかな?」
「巧いよ」
 正直に答える。
「何にでも全力で一生懸命やれって、先生が言ったから」
「熱心な生徒を持って先生は幸せだよ」
 ぎゅっと抱き締めてやると、カナは完全に湯だった様子で、俺の耳元に口を寄せた。
「カナと結婚したらもっと幸せになれるよ」
「そんな先のことは分からないな」
「絶対、絶対幸せだよ」
 カナが体を押しつける。体の温度とその柔らかさが、自分のシャツと彼女のワンピース越しに伝わってくる。
「とりあえず、今、幸せにしてよ」
 カナの下着に手を伸ばし、おもむろに脱がせる。暗黙の了解で、脱がせるのはいつもその綿の小さな下着だけ。不意に母親が来たときに備えて、互いの服は脱がさない。
「せんせ、エッチ」
「エッチな先生は嫌?」
「ううん、好き。……ああ、もう、大好きだよ、せんせ。大好き。好き。好きだよ」
 目を蕩けさせたカナが夢中で「好き」を連呼する。
 くそ。だからちびっこは嫌なんだ。
 一直線に感情をぶつけてくるから、こっちまで夢中になってしまうじゃないか。


久々に id:MayBowJing:20060621:1150895580 を見たら結構日本語が変だったので極端におかしかったり説明の足りない部分を修正。