瀟洒な侍女と無能門番

咲夜さんが幻想郷に来たばっかのころ

美「咲夜ちゃんは大きくなったら何になりたいのかな?」
咲「私、美鈴お姉ちゃんみたいなかっこいい門番になる!」
美「ホントに!?嬉しいなぁ。(咲夜ちゃんはかわいいなぁ♪)」

5年後

咲「美鈴お姉ちゃん・・・メイドの先輩が咲夜は胸が小さいって言うの・・・」
美「咲夜ちゃんは、まだ子供だから。大丈夫、大人になったらきっと胸も大きくなるよ。」
咲「でも・・・大人になってもこのままだったら・・・」
美「その時は私が大きくしてあげる。」
咲「本当に!」
美「本当よ。私、胸を大きくする方法知ってるんだから。(大人になったらたくさん揉んであげるからね♪)」

そして今

咲「ほんとに胸ばっかりでかくて使えない門番ね、あなたは!ほら!なんか言うことないの!」
美鈴「すっ、すいませ〜ん咲夜さ〜ん(あーあの頃はよかったなぁ・・・)」

という書き込みを某板某スレで見てからロマンティックが止まらない。止まらなかった。だから。


――誰も、俺を止めることはできない。


 雲一つなくどこまでも広がる青い空。
 そんな「悪天候」の下、紅魔館の門前にて。
 メイド長と門番のいつものやりとりは、やはりそんないつもの場所で繰り広げられていた。
「美鈴! 貴女、また巫女たちをあっさり通したわね!」
 がーっ! とすごい剣幕で怒るメイド長、十六夜咲夜
 それに対し。叱られた門番、紅美鈴は、思わず頭を抱えて座り込んだ。
「ひー、すいませーん! でもあいつら強くって」
「言い訳しない!」
「……はい」
 うなだれる美鈴。
 ――自分だって、通したくて通したわけではないのだ。ただ彼我の戦力差が圧倒的だっただけだ。
 美鈴はそう思ったが、言わぬが花。ただ黙って咲夜の叱咤を受ける。
「本当、使えない門番ね。いっそクビにしてあげうかしら」
「さ、咲夜さん!?」
 思わず顔を上げる。咲夜がくすくすと笑っていた。
「冗談よ」
 さらりと言うが、その咲夜の目は笑っていない。
「ともかく! これ以上仕事をしないつもりなら、私にも考えがあるわよ!」
「はぁい」
「……ちゃんと分かっているのかしら」
 肩を怒らせ屋敷に帰っていく咲夜の背中を、美鈴はいつまでも見つめていた。


「はぁ……いつから、こうなっちゃったんだろう」
 門番はため息を吐く。
 昔の咲夜は、こうではなかった。
 咲夜がまだ6つか7つの頃、彼女は何をするにしても美鈴の周りをぐるぐる走り回っていた。


「ああ……いつから、こうなってしまったのかしら」
 メイドはため息を吐く。
 昔の自分は、こうではなかった。
 咲夜が6つか7つの頃、「美鈴お姉ちゃんは、自分の憧れの存在だった。」
 変わってしまったのは自分の方なのだ。
 そのことに気付いたメイドは、二度目のため息を吐いた。


バイト休憩終了で時間切れ。