VHの解説文

機体解説

 「フレッシュ・リフォー(FR-08)」は、地球圏に君臨する巨大プラントである。その覇権を確立した15歳の少女リリン・プラジナーの名声は、VCa4年以降、いやが上にも高まった。誰もが磐石と信じた彼女の体制は、しかし意外にも短命で、VCa6年、リリン自身がFR-08内の主だった役職から身をひいてしまう。
 火星圏に移動したリリンは、アダックス社と国際戦争公司が主導して進めた火星戦線創設の際にはスポンサーとして協力し、また監察機構MARZを設立して、当時すでに各所で顕在化していたダイモンへの対応にも本腰を入れ始めた。
 しかし、彼女が生涯のタスクとして自らに課していたのは、Vクリスタルに由来するシャドウ現象の解決だった。対シャドウ戦に特化したホワイト・フリートを運用し、またそれとは別系統でCIS内を遊撃するオリジナルVR「ファイユーヴ」と連携しながらの活動は多忙を極め、本来ならそれだけで手一杯のはずだった。
 戦域は拡大し、限られた彼女の手駒は効率的な運用を求められ、特に即応部隊のさらなる機動力の向上は必須となった。その際の切り札とみなされたのが、定位リバース・コンバート技術の実用化と、その運用システムとしての強襲母艦「アイデルスター」級の就役だった。
 定位リバース・コンバートについては、その先駆的実例はすでにVCa2年にあった。地球圏TAI(テラ・アウストラリス・インコグニタ。かつてのオーストラリア大陸の残滓)で生起したサンド・サイズ戦役において、第五プラント「デッドリー・ダッドリー(DD-05)」から新型機XBV/DD- 05/02(HBV-502 第二世代型ライデンの試作機)を移送する際、プラント・スタッフとSHBVDの一部要員が試験的に執り行ったものである(「ワンマン・レスキュー」参照)。結局このときは、月周回軌道から地球上に機体を移送することには成功したものの、DD-05は予備システムを含むすべての動力を使用する羽目になり、その余波で一時はプラント内の生命維持システムさえもが停止する混乱を招いた。その無謀さゆえに現場関係者全員の逮捕、告発へと発展する騒ぎとなったこの実験は、定位リバース・コンバート運用の困難な側面を浮き彫りにした。
 リリン・プラジナーが幸運だったのは、パワー・ユニット面でのソリューションにあてがあったことだった。彼女は、時空因果律制御機構「タングラム」に先駆けて開発した補助システムを転用したのである。俗に「ベビー・タングラム」と呼ばれるこのシステムは、タングラムの小型版のような体裁をしている。2機を対にして動作し(「フォース」補習ステージ参照)、搭載するVコンバータはVRのそれをはるかに凌駕する実存力を有していた。この基本設計を流用することで、機動部隊として十分な数のVRを連続的に転送しうるSTRCカタパルトが実用化され、アイデルスター級4隻の発注が確定したのである。
 しかし解決すべき点は他にもあった。特に、DD-05による先駆的取り組みの際にも明らかとなった、転送後のVRの機動ラグ問題は深刻だった。定位リバース・コンバート直後のVRは、その実存性が安定するまでシステム全般がフリーズ状態に陥り、再起動するまでにかなりのタイムラグが発生する。目的地点へのピンポイント転送と即時展開を前提とする運用を行なうには、VRの側からも見直しが必要だった。
 ここでリリンは奥の手を使った。プラジナー博士が生み出したという点で、ある意味姉妹関係ともいえる緩やかな同盟状態にあったオリジナル・フェイ・イェン(ファイユーブ)を説得し、彼女が有するCIS自由従来システムの一部を流用したのである。結果、生まれたのがTF-14/stと呼ばれるフェイ・イェン系統の試作機で、定位リバース・コンバートの運用試験を数多くこなして貴重なデータ蓄積に貢献した。ただ、あくまで試作機だったために武装はなかった。これが災いし、実験を妨害、あわよくばデータの強奪を狙うテロ部隊(一説にはアイザーマン博士の手の内の者との指摘がある)による襲撃を頻繁に受け、少なからぬ損害を出してしまう。そこで試験部隊は、TF-14/stに自衛用の武装を施したft系を開発、対抗した。


 やがて定位リバース・コンバートが実用化されると、それまで10数機生産されたTF-14系試作VRもお役御免となり、順次退役していく。……っていう話だったのに、リリンったらあっさり約束破って超むかつく。理由なんか知らないけど、てゆーかどーせのらりくらりではぐらかすだけだから聞かないけど、フェイ・タイプのVRはそこそこ市場でも人気があって、第三世代型の商用VRにラインアップを求める声が強いとかなんとか、なによそれ。結局ft系をもとに量産タイプができちゃった。なにこれ、こんなの私じゃない!…ってそりゃ当たり前なんだけど、とにかく私はワン&オンリーのわけだし、あ、でも、TF-14Aの愛称「VH」、ヴィヴィッド・ハートって名付け親は私なの♪どんなに冷たくしても、やっぱり身内は断ち切れない。そこがエゴイストのリリンと私の違うとこ。
 で、せっかくだからアイテムも私がコーディネート。定番のレイピアはお約束、「愚者の慈愛」???うーん、なんか意味不明。
 右手にはファンシー・ブラスト!いつでもなんでもやっぱりピンク、ハンパなしの存在感っ!
 極めつけはやっぱり胸に秘めたビビッド・ハート!荒れ狂う火星の大地をまたにかけて、出ました、伝説のビビッド・ガール!!いつでもスポットライト浴びてたいから、ハンパなしの存在感を身につけたい!それって、やっぱり女の子の本音でしょ?見せつけちゃうから、いまさらみんなもビバ・マーズ!!

[補記]

本文中、一部に文脈上の逸脱、あるいは叙述の乱れがみられる。エディターAIは何者かによる編集シーケンスへの介入を指摘、更新されたプロテクト・ツールの導入を要請した。即座にそれは実行されたが、効果は徹底していない。ミリセク単位で実行される検閲にもかかわらず、その都度リライトされるいたちごっこのような状況により、一時期、編集作業は完全に停滞した。事態について報告を受けたプラジナー女史は、特例として、編集途中の未完成バージョンをライブラリー登録する決定をくだした。以下、彼女のコメントである。
「あの子のことだし、いずれ飽きるわ、気長に待ちましょう」
 「あの子」とは誰かとの問いにプラジナー女史は明確な回答を示さなかったが、これがくだんのオリジナルVR「ファイユーヴ」によるものと推測する向きは少なくない。一説では、プラジナー女史とオリジナルVRとの間には、現在ある種の緊張を伴う関係が続いているとの指摘もあり、今回の件もその文脈から様々な憶測を呼んでるの♪知ってた?

とうとう亙重郎*1がいつも以上におかしくなった。いいぞもっとやれ。

*1:解説文を書いてるバーチャロンのえらくてえろい人。