「無口な女の子〜」スレに投下するかもしれないお話

「無口な女の子〜」スレに投下しないかもしれないお話。
21歳未満のガキンチョが読んだら こんや 12じ だれかが しぬ


 六時半に目が覚めた。
 いつも登校時間ぎりぎりまで起きている俺にしては、珍しい時間。何故かアタマもすっきりで、二度寝する気にもならない。
 おかげで今日は、随分とゆったりした気分で登校することとなった。
 よく見ると、周りの連中も心なしかのんびりして見える。二時間早く起きるだけでこんなにも世界が変わるものかと、俺は驚いた。
 明日からも、ちゃんと早起きしよう――多分無理だが。
「……お?」
 心中で頼りない誓いを立てた時、前方にクラスメートの姿を見つけた。
 普段はあまり話したりもしない。だが今日は、奴にも挨拶しようという気になった。
「おはよっす、片瀬」
「んっ!?」
 奴――片瀬の肩が、びくりと大きく震える。
 そんなにでかい声を出したつもりはないんだが。
「な、名瀬くん……」
「朝、早いな。いつもこの時間なのか?」
「……」こくこく。
 俯いて、口の中でもごもごと話す片瀬。何を言っているのかは分からないが、頷きの動作から考えると、きっと肯定の意味なのだろう。
「すげーな。俺なんか、遅刻しないようにするのが精一杯だぜ」
「……」ふるふる。もごもご。
 首を振っているということは、今度は否定の言葉。だが、何を否定しているのかイマイチ分からない。
「ごめん、もう一回言って」
「〜〜ッ!?」
 片瀬の口元に顔を近付ける。ふわりと、香水とは違う、いい匂いがする。
「あ、あの。そんなこと、ないよ。普通です」
「意外と片瀬もキッツイ物言いするなあ。俺は普通未満?」
 そう訊くと、片瀬は困ったように首を傾げた。嘘の吐けない奴だ。
 こうなると、ちょっとこいつを懲らしめたくなってくる。
「ふん。明日からも毎日この時間に登校してやる。絶対にだ。見てろよ片瀬」
「……」こくり。
「そして一年間遅刻なしだったらなんかくれ」
「……?」
「なんかくれ」
「……!」ふるふる。
「だって賞品がないと張り合いがないからな。モノは何でもいいから片瀬に任せる。任せるが、俺は唐突に寿司が食いたくなった」
「……! 〜〜ッ!」ふるふるふるふる。
「ダメだ、もう決めたからな! 来年を楽しみにしてるぜ片瀬!」
 ふるふる。ふるふるふるふる。
 片瀬はいつまでも頭を振り続けた。

# =====

 そして一年後。
 まさか約束最後の日にインフルエンザに罹るとは思わなかった。格好悪い。
 思えばあれから一年で片瀬とは随分と親密になった。今では宿題を教えあったり――訂正。教えていただいたりする仲だ。
 その片瀬を最後の最後に裏切った形になってしまい、少々心苦しさを覚えた。
 ぴんぽーん。
 そんなことを熱で浮かれた頭で考えるともなく考えていると、突然呼び鈴が鳴った。
 どうやらお袋が出迎えたらしい。何やら玄関で話し込んでいるようだ。


ここまで書いて力尽きた。